2017年度 宇宙電波懇談会シンポジウム

 

日時 2018319()  - 20()  2日間

場所 国立天文台三鷹大セミナー室(すばる棟)

テーマ:宇宙電波懇談会シンポジウム FY2017「未来を拓く技術開発とその将来展望」

世話人:大西利和(宇電懇運営委員長)、古屋玲(宇電懇運営副委員長)、河野孝太郎,本間希樹、坂井南美、田村陽一

 

【背景】

 直近2年度の宇電懇シンポジウムでは、将来計画を担う若手層の、議論への積極的な参加を促しつつ、

(個別の将来計画について直接的な検討を行うというよりは)電波天文学が今後果たすべき役割について、

多角的に議論を行ってきた。こうした経緯・成果を踏まえつつ、今年度の宇電懇シンポジウムでは、

2つの目標を設定する。

 

(1) 学術会議マスタープラン2020に向けた、個々の将来計画についての討議

 まず、学術会議天文学・宇宙物理学分科会で近く議論されるであろう、次の「マスタープラン」の改訂を見

据えた、個々の将来計画についての議論を行う。2020年に想定されているマスタープランの策定は、大幅な

改訂を伴う大規模なものになることが見込まれており、これに向けた準備として、 今回の宇電懇シンポジウム

は極めて重要な機会となる。宇電懇としては、効率的かつ効果的な議論を行うため、シンポジウム実施に先立ち、

各将来計画について、事前に計画の狙いや現状を整理した、最新の資料を作成・提出していただいた。これを

宇電懇会員に公開し、各会員から忌憚のない意見を述べてもらうためのアンケートを実施する。これはセカンド・

サーキュラー配信にあわせて実施する。 これらのアンケートの結果も含めて、それぞれの将来計画(拡張ALMA

計画、ngVLAを含む)に関する議論を深める。

 

(2) 電波天文学の将来を切り拓く技術開発の動向と将来展望についての議論

 もう一つの目的は、こうした将来計画を実現させる上で不可欠な、技術開発に焦点をあてた議論を行うこと

である。新しい技術の登場が学問の劇的な進展を促した例は枚挙に暇がない。天文学・天体物理学上の重要

課題に迫る研究とそれを支える観測技術の開発は両輪である。 現在提案・議論されている将来計画はどうで

あろうか?重要なサイエンスに特化した独創的な小規模計画も複数提案されている一方、大型化しコストが

莫大になることが想定されているものもある。 多様な将来展望を具現化していくためには、現状の単純なス

ケールアップではなく、劇的な低コスト化はもちろん、新しい発想に基づく観測装置の画期的な拡張や高精度

化などを可能とするイノベーションが次々と湧き起こらねばならない。研究の厚み・多様性を確保して自由な

発想に基づく技術革新を促し、持続的に育てるために、今、我々は何をすべきなのかが問われている。

 

【詳細な内容】

 セッション1では、宇電懇で提案されている各将来計画からの報告を受け、議論を行う。対象となる計画は、

LiteBIRD」「南極THz望遠鏡」「SKA」「Large Submillimeter Telescope」と「拡張ALMA計画」

ngVLA」である。アンケートの結果についてはシンポジウム中にポスターで公開し、議論の参考とする。

 

 セッション2では、技術開発の動向とその将来展望を議論する。個々の将来計画・プロジェクトに捉われる

ことなく、どのようなところに新しいブレークスルーの「芽」があるのか、どのような将来性が期待されるのか、

について、 招待講演および一般講演に基づく議論を行う。天文学の進展に伴い、どのようなパラメーター・

スペースに切り込むことが今後要請されるか、というscience requirementについての講演や、基幹技術に

ついての海外動向に関するレビューも含める。

 

 最後に、こうした2つのセッションを受けて、総合討論を行う。ロードマップ改訂や、さらにその先を見越

した、宇電懇としての次期大型計画をいかに選定し、推進していくか、その進め方について、宇電懇会員からの

意見を聞きつつ、方向性を見出したい。また、そうした将来計画を実現する上で欠かせない、イノベーションを

育む研究環境として、何が求められているのかを議論したい。 最後に、先般の学術会議シンポジウムでも取り

上げられた「既存の研究分野・団体」の役割や存在意義についても議論する時間をとりたい。

 

 若手セッション:学位を取得したばかりの若手に自分の博士論文の成果を積極的に紹介してもらうセッション

も設けています。該当者の積極的な応募をお待ちしています。

 

プログラム:

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DAY1 (3/19, Mon.)

 

10:00 - 10:10 大西利和 (大阪府大) 本シンポジウムの獲得目標

 

session 2: 新しい展望を切り開く技術動向

10:10 - 10:30 河野孝太郎 (東大) 天文と技術のかけ橋

10:30 - 10:55 遠藤光 (TU Delft) 学際協力のすすめ: 世界初のオンチップフィルターバンク分光器 DESHIMA・MOSAIC の研究開発グループが目指す、イノベーションのかたち

10:55 - 11:20 小嶋崇文 (NAOJ) ヘテロダイン受信機・技術の最新動向・将来展望

11:20 - 11:45 谷口暁星 (東大) スイッチングから変調へ - 相関雑音除去に基づくミリ波サブミリ波分光観測手法の開発と展望

11:45 - 12:10 秋山和徳 (MIT) スパースモデリングの電波天文学への展開ー超解像多次元イメージングから磁場トモグラフィーまでー

 

12:10 - 13:20 Lunch Break + Poster

 

session 1: プロジェクトの現状と今後

13:20 - 13:30 アンケート結果について (古屋玲)

13:30 - 13:55 羽澄昌史 (KEK) LiteBIRD

13:55 - 14:20 久野成夫 (筑波大) 南極望遠鏡

14:20 - 14:45 川邊良平 (NAOJ) LST

14:45 - 15:10 高橋慶太郎 (熊本大)、赤堀卓也 (NAOJ) SKAそのその

 

15:10 - 15:30 Coffee Break + Poster

 

15:30 - 16:10 Tony Beaseley (NRAO) ngVLA

16:10 - 16:50 井口聖 (NAOJ) ALMA+ALMA拡張計画

16:50 - 17:45 議論 (Lead: 田村陽一)

 

18:00 -       懇親会@コスモス会館

 

 

 

 

DAY2 (3/20, Tue.)

 

session 2 (cont.)

09:00 - 09:25 美濃和陽典 (NAOJ) 光赤外における技術の新しい展望 - 補償光学における技術開発の最新動向を例に

09:25 - 09:50 齋藤正雄 (NAOJ) アルマ、野辺山、TMTを通して考えたこと

09:50 - 10:15 田村陽一 (名大) ミリ波補償光学の創成

10:15 - 10:40 栗田光樹夫 (京大) 京大3.8m可視・近赤外望遠鏡の技術

10:40 - 11:05 新田冬夢 (筑波大) 南極テラヘルツ望遠鏡計画に向けた広視野電波カメラの開発

11:05 - 11:30 青木貴弘 (山口大)SKAにおける技術課題と日本の貢献

11:30 - 11:55 田島治 (京大) GroundBIRD実験と関連技術の動向・展望

 

11:55 - 13:30 lunch break + poster session

 

13:30 - 14:10 Session 2に関する議論 (Lead: 河野孝太郎)

 

session 3: 一般講演

14:10 - 14:35 立原研悟 (名大) NANTEN2の将来計画: 新たなサブミリ波サーベイとコミュニティへの寄与

14:35 - 15:00 大橋聡史 (理研) 多波長偏光観測で調べる原始惑星系円盤のダスト分布

 

15:00 - 15:15 Coffee Break + Poster

 

15:15 - 15:40 小林将人 (名大) 多相星間媒質中における分子雲質量関数の時間発展と星形成過程

15:40 - 16:05 徳田一起 (大阪府大/NAOJ) ALMAによる近傍星形成領域における高密度分子雲コアの観測

16:05 - 16:30 古屋玲 (徳島大) サブミリ波直線偏波撮像システムSCUBA2+POL2が拓いたdiscovery spaceと次世代装置への課題

 

session 4: 総合討論、特に日本学術会議マスタープラン2020へ向けた準備

16:30 - 17:30 総合討論 (Lead: 大西利和)

 

○ポスター発表

P1 氏原秀樹(情報通信研究機構) NICT鹿島における広帯域受信システムの開発

P2 泉拓磨(国立天文台) A Revolutionized View on the Molecular and Atomic Obscuring Structure of AGN with ALMA

P3 中村文隆(国立天文台) TMC-1の磁場と分子雲の内部構造について

P4 上原顕太(東京大学) 銀河系中心50km/s分子雲の束縛された高密度分子雲コア

P5 赤堀卓也(国立天文台水沢) Square Kilometre Array / 百万平米電波望遠鏡

P6 川室太希(国立天文台) Chandra ALMA  で探る Circinus galaxy 中心 < 100 pc のガスの性質

P7 松尾 宏(国立天文台) ALMAを超える観測性能を如何にして実現するか?